レビュー：A群連鎖球菌感染症の病原性・疫学・制御戦略　Nature Reviews Microbiology

Pathogenesis, epidemiology and control of Group A Streptococcus infectionCitationNature Reviews Microbiology, vol. 21, pp. 431–447 (2023)論文の要約本レビューでは、ヒトに広く感染するA群連鎖球菌（GAS、Streptococcus pyogenes）の病原性メカニズム、伝播パターン、制御戦略について、統合的視点から整理している。病原性因子：GASは免疫回避型M蛋白質やエンテロトキシン、エフェクター酵素群など多様な分子兵器を有し、咽頭炎、皮膚感染、劇症型疾患、さらには免疫後合併症（リウマチ熱や急性糸球体腎炎）に至る多様な臨床像を引き起こす。疫学とクローン進化：世界規模でのGAS感染は変動傾向にあり、新興クローンの出現にはウイルス性病原性因子の獲得や抗菌薬耐性・薬剤感受性の変化が関与している。最近ではペニシリン耐性の兆候やマクロライド耐性の増加も報告され、治療選択に影を落としている。集団免疫と伝播制御：幼児や学校環境での集団感染が継続しており、季節性・集団発生との関連が顕著である。適切な診断・感染対策、抗菌薬の適正使用、学校や医療機関での標準的予防プロトコルの整備が重要とされる。治療と予防の課題：現時点でペニシリン耐性は未確認ながら、治療抵抗性としてマクロライド耐性が増加中である。将来的な課題としてペニシリン耐性の出現、ワクチン開発（Mタンパク質標的ワクチンなど）、多剤併用や新規分子標的治療の開発が求められている。本論文は、GAS感染の全体像を分子・臨床・集団疫学・公衆衛生の視点で俯瞰的に評価したものであり、小児・成人医療から感染制御、創薬、ワクチン研究まで幅広い領域にとって重要な知見を含むレビューである。

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