レビュー：コロナ禍の病院感染対策、その「意外な真実」とは？パンデミックが院内感染に与えた複雑な影響を徹底解明　Journal of Hospital Infection

Impact of Infection Prevention and Control Practices, Including Personal Protective Equipment, on the Prevalence of Hospital-Acquired Infections in Acute Care Hospitals During COVID-19: A Systematic Review and Meta-analysisCitationJournal of Hospital Infection, 2024; 147: 32–39概要本システマティックレビューとメタ解析は、COVID-19パンデミック期に急性期病院で導入された感染予防・管理策（特に個人防護具：PPE）の強化が、非COVID-19院内感染（HAIs）の発生率に与えた影響を、パンデミック前後で比較して評価したものである。2019年以前と2020〜2021年を比較した15件の研究が対象となった。対象感染症と病原体CLABSI、CAUTI、呼吸器感染症、Clostridioides difficile感染（CDI）、外科部位感染（SSI）、人工呼吸器関連イベント（VAE）などが評価対象。検出菌はStaphylococcus spp.、Enterococcus spp.、Klebsiella spp.、Pseudomonas spp.、Escherichia spp.など。主な結果全体として、COVID-19期に陽性培養数が有意に増加した研究が3件あったが、患者ベースの培養陽性数は有意差なし。呼吸器感染症患者数はCOVID-19期に有意に減少。CDIは複数研究で発生率が減少し、一部では約3分の1まで低下。CLABSIは一部研究で有意に増加、特に集中治療室やカテーテル関連感染で顕著。CAUTI、VAEでは有意な変化は認められなかった。考察PPEや感染対策の強化は一部のHAI減少に寄与した可能性がある一方、PPE不足や業務負担増、標準ケア手順の変更が一部感染症（特にCLABSI）の増加要因となった可能性がある。CDI減少はバリア予防策や環境清掃、スタッフの感染警戒意識向上に起因すると考えられる。呼吸器感染減少も同様に感染防御策強化の影響が示唆された。結論COVID-19下の強化された感染管理策は、院内感染の種類ごとに異なる影響をもたらし、減少する感染症もあれば増加するものもあった。感染対策はパンデミック下でも持続的に実施可能な基本手技（手指衛生、標準PPE、スタッフ教育）が重要であり、今後はより均質なデータと大規模前向き研究が求められる。

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