レビュー：免疫と季節性インフルエンザウイルスの共進化　Nature Reviews Microbiology

Co‑evolution of immunity and seasonal influenza virusesCitationNature Reviews Microbiology, vol. 21, pp. 805–817 (2023)論文の要約本レビューは、季節性インフルエンザウイルスの進化が、ヒトの集団免疫との相互作用によってどのように駆動されているかを、分子生物学的・疫学的視点から総合的に解説している。ウイルス表面タンパク質であるヘマグルチニン（HA）やノイラミニダーゼ（NA）は、中和抗体による選択圧を受けて抗原変異を繰り返すが、構造的制約によって進化には一定の方向性と限界がある。個人内感染におけるウイルス多様化、ならびに集団内での再感染やワクチン接種による免疫プロファイルの多様性が、ウイルスの適応経路に影響を与えている。特に、初感染時の免疫記憶がその後の免疫応答に強く影響を及ぼす「免疫刷り込み（original antigenic sin）」の存在は、ワクチン設計と免疫回避の理解において重要な論点である。本論文では、普遍的インフルエンザワクチンの開発に向けた課題として、抗原部位の保存性、宿主免疫の年齢・感染歴による個人差、ウイルスの適応速度などが挙げられており、今後の制御戦略にはウイルスと免疫の「共進化」に対する動的な理解が不可欠であると論じられている。

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