レビュー：尿路感染症の病原性・宿主感受性・新規治療戦略　Nature Reviews Microbiology

Urinary tract infections: pathogenesis, host susceptibility and emerging therapeuticsCitationNature Reviews Microbiology (2025年2月号)論文の要約本レビューは、尿道・膀胱・腎臓などに生じる尿路感染症（UTI）について、微生物学的要因と宿主応答を多面的に整理し、抗菌薬以外の新しい治療戦略にも焦点を当てている。尿路感染症は世界で年間約4億症例を引き起こし、エシェリキア・コリをはじめ、クレブシエラ、エンテロコッカス、緑膿菌、黄色ブドウ球菌およびカンジダなど、多様な病原体が関与している。まず、細菌はピリミジン、鉄取り込み、バイオフィルム形成、線毛・接着因子などを駆使して上部尿路に進入し定着する。これに対して宿主側は、抗菌ペプチド（β‑ディフェンシン、カテリシジン等）や尿路上皮の免疫応答、組織常在メモリーT細胞などを動員し感染防御を試みる。しかし近年は抗菌薬耐性の増加とあいまって、治療が困難になっているため、本論文では抗菌薬以外の新たな戦略として、接着阻害剤による細菌定着防止、バイオフィルム分解除去剤、プロバイオティクス、腸‐膀胱アクシス制御、生体内ワクチン、さらに細胞免疫誘導型ワクチン開発も紹介されている。本レビューは、UTIを病原体側・宿主側両面から多角的に検証し、伝統的治療を超える新しい治療・予防アプローチを提示しており、感染症研究者、公衆衛生・臨床応用に取り組む医療者にとって極めて有益な内容である。

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