レビュー：感染症最前線　What’s Hot This Year in Infectious Diseases Clinical Science　新薬開発・予防戦略・デング熱から鳥インフルエンザH5N1まで、臨床科学の進展と脅威に迫る　CID

What’s Hot This Year in Infectious Diseases Clinical ScienceCitationClinical Infectious Diseases, 2025; 80(6): 1216–1220概要本レビューは、IDWeek 2024で取り上げられた2024年の感染症臨床分野の注目トライアルと臨床動向を総括している。主なテーマは以下の通り。新規抗菌薬Gepotidacin（第一種トリアザアセナフチレン系）：EAGLE-2/3試験で単純性UTIに対しニトロフラントインに非劣性（1試験では優越性）を示し、FDA審査中。Pivmecillinam：米国でFDA承認、耐性率低く単純性膀胱炎の有力候補。Cefepime-taniborbactam：CERTAIN-1試験で複雑性UTIにおいてメロペネムより優れる結果も、製造上の理由でFDA承認保留。Ridinilazole：C. difficile感染症において再発率低下と腸内細菌叢保持を示すも、主要評価項目で優越性なし。Linezolid：早期梅毒に対するTrep-AB試験でペニシリンに劣り中止。抗菌薬予防の新戦略VAP予防：吸入アミカシン（AMIKINHAL）で診断率低下も臨床転帰に改善なし。急性脳損傷患者へのセフトリアキソン単回静注（PROPHY-VAP）でVAP減少と臨床転帰改善。人工関節感染予防：一般患者へのバンコマイシン追加はSSI低減せず。抗菌薬回避アプローチ再発性UTI予防：膣内プロバイオティクスで有意な再発抑制効果。急性呼吸器感染症：鼻スプレー使用で呼吸器症状日数と抗菌薬使用減少。黄色ブドウ球菌対策Ceftobiprole：複雑性菌血症に対しダプトマイシンに非劣性、FDA承認。SABATO試験：選択基準を満たす単純性菌血症では早期経口切り替えが非劣性で在院日数短縮。鼻腔デコロナイゼーション：ポビドンヨードはムピロシンに比べICU由来S. aureus培養陽性率が高く、ムピロシン継続推奨。新興・再興感染症デング熱：2024年は南北アメリカで前年の3倍に増加。麻疹：世界的にワクチン接種率低下で増加、米国でも小児中心に流行。Mpox（サル痘）クレードI：アフリカでの流行拡大、テコビリマットは有効性示せず、ワクチンが主対策。H5N1高病原性鳥インフルエンザ：米国で家畜間・ヒト間伝播の可能性が示唆され、畜産従事者に抗体陽性例。結論2024年は新規抗菌薬の開発や既存薬の新適応探索が進む一方で、新興・再興感染症の脅威が顕在化した。臨床研究は抗菌薬適正使用、予防戦略、多剤耐性菌対策に焦点を当てつつ、公衆衛生上の緊急課題にも対応している。

There are no comments yet.

Please log in to write the first comment.