抗菌薬使用量評価における新指標DASCの提案とDOTとの比較　CID

Days of Antibiotic Spectrum Coverage: A Novel Metric for Inpatient Antibiotic ConsumptionCitationClinical Infectious Diseases, 2022; 75(4): 567–576論文の要約本研究は、入院患者の抗菌薬使用量評価において従来用いられてきたDOT（Days of Therapy）の限界を補うため、抗菌薬の使用量とスペクトラム幅の両方を組み込んだ新指標 DASC（Days of Antibiotic Spectrum Coverage） を開発し、米国退役軍人医療システム（VHA）の124病院データを用いて比較検証したものである。背景DOTは単剤と併用療法でスペクトラムが同等でも値が異なる、スペクトラム縮小（de-escalation）や狭域薬選択の努力を反映できないなどの欠点がある。DASCの開発抗菌薬77剤について、11種類の「野生株」と5種類の「獲得耐性菌」の計16カテゴリーに対する活性をスコア化（ASCスコア2〜15点）。1日の使用薬剤のASCスコア合計をDASCとし、DOTと比較可能な形に集計。比較結果DOT/1000患者日とDASC/DOTの相関は低く（ρ=0.16）、低DOTが必ずしも狭域薬使用を意味しないことが判明。病院ランキングでは、DOTとDASCによる順位差が±10%以上あったのは21.8%の施設。特にICUや外科病棟で差が大きかった。症例例示では、併用から単剤への切替やde-escalation時にDOTでは変化が見えないが、DASCではスペクトラム縮小を反映。意義と結論DASCは、抗菌薬の総使用量とスペクトラム幅を同時に評価でき、DOTよりも抗菌薬適正使用（ASP）の努力を可視化しやすい。病院間ベンチマーキングの精度向上や、公表指標としての利用可能性が示唆される。今後は症例ミックスや耐性菌有病率を考慮したリスク調整モデルの構築が必要とされる。

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