日本紅斑熱（Japanese Spotted Fever）におけるキノロン系薬併用療法の効果検証　IJID

Effectiveness of fluoroquinolone antimicrobials in addition to tetracyclines for Japanese spotted fever: A retrospective analysis using a national inpatient databaseCitationInternational Journal of Infectious Diseases, 123 (2022): 70–75論文の要約本研究は、日本紅斑熱（Japanese Spotted Fever: JSF）患者における治療初期のフルオロキノロン（FQ）とテトラサイクリン（TC）の併用療法の効果を、日本の全国入院診療データ（DPCデータベース）を用いて評価した後ろ向き観察研究である。対象と方法：2010年から2021年にかけて、18歳以上の入院患者1,060例（FQ+TC併用群434例、TC単独群626例）を解析。傾向スコアに基づく逆確率重み付け（IPTW）を用いて群間のバランスを調整した。主な結果：FQ+TC併用群とTC単独群の間で、院内死亡率（2.0% vs 1.0%）、合併症率（8.4% vs 6.3%）、入院期間（中央値10日）、医療費（中央値約3,300ドル）に有意差は認められなかった。重症患者に限定したサブグループ解析においても、同様に有意な差は見られなかった。考察と意義：JSFに対してFQの追加が予後を改善するという証拠は得られず、治療初期にFQを併用する必要性は乏しいことが示唆された。一部の過去報告ではFQ単剤での治療成功例も存在するが、毒素放出の懸念や副作用（C. difficile感染、血糖異常、腱断裂など）もあるため、慎重な使用判断が求められる。本邦ではJSF治療に関する標準化ガイドラインが存在せず、本研究結果は今後の診療指針の構築に寄与する。本研究は、リアルワールドデータに基づき、実臨床で頻用されるFQ併用療法の有効性を科学的に評価した初の大規模研究であり、抗菌薬適正使用の観点からも重要な示唆を提供している。

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