症例報告：脳を喰らうアメーバとの死闘！1982年奇跡の生還劇から学ぶ「致命的感染症」早期診断と治療の最前線　NEJM

Successful Treatment of Primary Amebic MeningoencephalitisCitationN Engl J Med. 1982 Feb 11;306(6):346–348. doi:10.1056/NEJM198202113060607概要本論文は、自由生活アメーバ Naegleria fowleri による原発性アメーバ性髄膜脳炎（PAM）に対して治療が成功した世界初の症例報告である。症例概要9歳女児が頭痛、発熱、嘔吐で発症し、意識障害と項部硬直を呈して入院した。髄液検査では著明な細胞増多と低糖、蛋白上昇を認め、湿潤標本にて運動性アメーバが観察されPAMと診断された。治療経過直ちに静注アンホテリシンB（1.5 mg/kg/日）および脳室内投与（1 mg/日）が開始された。加えてミコナゾール、リファンピシン、デキサメタゾンを併用し、積極的な支持療法が行われた。治療開始後48時間で状態は安定し、1か月の入院加療で軽快、唯一の後遺症は軽度の下肢痛覚低下であった。病原体同定と薬剤感受性試験髄液から分離されたアメーバは光顕および電子顕微鏡で N. fowleri と同定された（p.347, Fig.1）。薬剤感受性試験（p.348, Fig.2）では、アンホテリシンBとミコナゾールの併用で相乗的抗アメーバ効果が確認された。考察それまで報告されたPAMはほぼ全例致死的であったが、本例では早期診断、アンホテリシンBの静注と髄腔内併用、さらにリファンピシンとミコナゾールの併用が奏功したと考えられる。著者らは、迅速な診断と多剤併用療法が救命の鍵であると結論づけている。

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