謎深まるマダニの新ウイルス「エゾウイルス」！北海道で発見された未知の病原体を徹底解明　Nature Communications

A novel nairovirus associated with acute febrile illness in Hokkaido, JapanCitationNat Commun. 2021;12:5539. doi:10.1038/s41467-021-25857-0概要本研究は、北海道においてマダニ咬傷後に発熱、白血球減少、血小板減少を呈した患者から新規オルソナイロウイルスを同定し、「Yezo virus（YEZV）」と命名した初報である。2019年および2020年に札幌近郊で発症した2例の患者から、髄液・血液検体を用いた解析によりYEZVが分離され、ウイルス量は発症初期に血清中で最大10⁷ copies/µlを超えた。血液検査では、著明な肝酵素上昇、フェリチン・CK上昇、凝固異常、異型リンパ球増加が共通して観察された。患者はいずれも抗菌薬投与を受けたが、自然経過で回復した。2014～2020年の患者248例の後方視的検討では、さらに5例がYEZV感染と確認され、計7例の感染例が報告された。そのうち4例はBorrelia属との重複感染を伴っていた。動物サーベイランスでは、エゾシカおよびアライグマに抗体陽性が確認され、また野外採取したマダニ（特にHaemaphysalis megaspinosa）からYEZV RNAが最大3.8％の割合で検出された。分子系統解析の結果、YEZVはルーマニアでマダニから分離されたSulina virusと近縁であり、新規オルソナイロウイルスとしてSulinaグループに分類された。結論として、本研究は日本で初めてヒト発熱性疾患の原因として新規オルソナイロウイルスを明確に同定し、ヒト・野生動物・マダニを介した地域内伝播を実証したものである。今後は他地域への分布調査、感染症鑑別診断における位置づけ、病態機序解明が課題となる。

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